うんこしたい障害者を阻むモノ

 
ああ、うんこしたいなあ。
 

便意を催したとき、義足を履いている人間にとって向かう先が車いす用のトイレ。
最近では多目的トイレと言われているトイレです。
今では多くの駅や店舗、テナントで見かけるようになりました。
 

だれでもといれ

 

かつては車いす用トイレと言われていましたが、
最近では赤ちゃんのオムツ交換やオストメイト(人工肛門)対応など
普通のトイレ(スペース)では不都合が発生する方のニーズに応えるべく
整備されてきています。非常に嬉しいことです。
 

うんこ中
 

右ヒザが固定され、片足すべてを覆うような義足を履いている私にとって、
トイレのスペースによっては、便器にしっかりとお尻を置くことができません。
上記の写真では、靴の厚みの分だけ収まらなかったので
靴を脱いで、ようやくギリギリ収まったという状況です。
言い換えれば、裸足でトイレに入るようなものですね。
※ちゃんとパンツを履いた状態で撮影しているのであしからず。
 

ああ、うんこしたい
 ↓
多目的トイレを探す
 ↓
ない!!
 ↓
普通のトイレに行く
 ↓
狭くて座れない
(義足が邪魔でトイレのドアが閉まらない)
 ↓
義足を外して用を足すorあきらめる
(トイレの狭いスペースで義足を履くのは慣れない限り至難の業)
(あきらめた場合の悲劇は想像にお任せします)
 

ただでさえ移動に不自由が発生する障害者。
トイレを探すという行為自体にかなりの負荷がかかっています。
最近ではCheck A Toiletというトイレマップサイトもありますし、
アプリでもいくつかあるのでだいぶ便利にはなりました。
(みなさんどんどん情報を追加してください)
 

健常者にとって多目的トイレを活用することは、
広さや衛生面といったよりよい環境下で用を足すことへの
ポジティブなアプローチであり、選択でしょう。
しかし、障害者にとっては、まさに死活問題。
間違うことが許されない、緊迫感迫る選択なのです。
外出時、必要以上のストレスを発生させる一因にもつながります。
 

また、洋式か和式かという点も重要です。多目的トイレは洋式です。
足が不自由な私にとって中腰は、難易度の高い姿勢なので洋式が嬉しいです。
目が不自由な方が和式トイレの便器の中に足を突っ込んだ話も聞きました。
 

トイレがあれば助かる健常者に対し、
トイレの形式まで考えなくてはならない障害者。
考える項目が多いことが障害者のリアルです。
自分の活動範囲外の場所に行かない理由ともなるでしょう。
 

あんよ

 

ちなみに我が家のトイレでは義足を履いた状態だとドアが閉まりません。
開けっ放しでうんこしなくてはならないのです。
“義足を外してうんこしたい派”の私には、大きな問題になりませんが。
 

余談ですが、障害者にとって部屋を選ぶときの判断軸は
健常者の判断軸とは違うものもあり、多様なものです。
この記事のようにトイレの広さも障害状況によって重要なウエイトを占めます。
私にとっては「バス・トイレ別」ということが譲れなかったものですが
それはバスルームに一定の広さがなければ移動が困難となり、
事故につながることがその理由です。
 

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この記事を書いた人

佐々木 一成

1985年福岡市生まれ。生まれつき両足と右手に障害がある。障害者でありながら、健常者の世界でずっと生きてきた経験を生かし、「健常者の世界と障害者の世界を翻訳する」ことがミッション。過去は水泳でパラリンピックを目指し、今はシッティングバレーで目指している。障害者目線からの障害者雇用支援、障害者アスリート目線からの障害者スポーツ広報活動に力を入れるなど、当事者を意識した活動を行っている。2013年3月、Plus-handicapを立ち上げ、精力的に取材を行うなど、生きづらさの研究に余念がない。