新卒3年以内で辞めたくないひとが行くべき企業の条件とは?

大学新卒者の3年以内離職(以下、早期離職率)についてはこれまでも様々な記事でお伝えしてきましたが、一貫して主張してきたのは早期離職が良いか悪いかなんてわからないということです。ただ、そうはいっても「3年以内で辞めないために何が必要か」「3年以内で辞めない会社はどんな会社か」という質問を受けますので、今回は「早期離職したくない人が行くべき会社、行かない方がいい会社の条件」についてお伝えしようと思います。
 

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1.早期離職したくないなら大企業に行け
 

まず、大前提として「大企業の方が離職率は低い」という事実を知っておきましょう。たまにキャリアコンサルタントや中小企業の社長などが「今の時代は大企業に入っても3割が3年で辞めてしまう。だから企業の規模ではなくて自分のやりたいことで仕事を選ぼう」と言っていますが、あれは嘘です。
 

厚生労働省が発表している最新のデータでは大卒者の3年以内離職率は32・4%ですが、従業員1000人以上の企業では22.8%と約10ポイントの差があります。一方、従業員33人~99人の企業は39.6%と平均よりも高いのです。ちなみに30人以下の企業では早期離職率50%を越えます。大企業に行っても3割辞めるとか言っちゃう人の嘘がわかります。「早期離職したくないなら大企業」は最低限の知識として持っておきましょう。
 

2.早期離職したくないならインフラ系か製造業に行け

企業規模だけでなく、業種も重要な要素です。こちらも厚生労働省が統計を発表しています。早期離職率が低い順では、「鉱業、採石業、砂利採取業」(7.0%)、「電気、ガス、熱供給、水道業」(10.6%)、「製造業」(18.7%)となっています。「鉱業、採石業、砂利採取業」は企業数もあまり多くないでしょう。現実的に就職先を考える場合には「電気、ガス、熱供給、水道業」と「製造業」で考えるのが良いと思います。簡単に言えばインフラ系と製造業です。
 

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3.早期離職したくないなら重工業に行け
 

製造業といっても、お菓子を作っている会社もあれば、戦闘機を作っている会社もあります。作っているものが違えば、会社の文化も違うので早期離職率だって違います。こちらも分類別に早期離職率が低い方から見ていくと「鉄鋼業」(11.8%)、「化学工業、石油製品、石炭製品製造業」(12.4%)、「機械関係」(13.8%)です。すごく大雑把にまとめると「重たくて固くてデカイもの」つくってる業界が多いです。一般的には重工業といわれる業界です。ですから、製造業の中でも重工業に行けば早期離職する確率は低くなるといえそうです。
 

ちなみに製造業では「繊維工業」が37.8%で最も高い早期離職率となっていますが、他の業界では小売業が39.4%、医療・福祉が38.8%ですから、製造業全体の早期離職率は決して高くないのがよくわかります。
 

4.早期離職したくないなら就職四季報で離職率を調べろ
 

ここまでは従業員規模と業種という観点から早期離職率についてお伝えしてきましたが、「私の行こうと思っているあの会社はどうなんですか?」と思っている人もいると思います。各社の早期離職率は就職四季報で調べることが可能です。就職四季報には上場企業であればすべて掲載されている(はず)ですし、未上場でも新卒採用数が多い会社はけっこうな確率で載っています。また、就職四季報中堅・中小企業版というのもあります。
 

ただし、就職四季報に載っているのは企業の自己申告の情報であることと、早期離職率については掲載していないケースも多い点は注意しましょう。早期離職率について未回答の会社は公表したくないくらい早期離職率が高いと見てしまってほぼ間違いありません。極一部にそうでない会社もありますが、例外中の例外であると思われます。
 

5.早期離職したくないなら「やりがい」を売りにする会社には行くな
 

1~4は事実情報をもとにお伝えしてきましたが、最後は完全に私の個人的な意見です。
 

会社説明会に行くと、やたらと「仕事のやりがい」を前面に押し出している企業に出会うと思いますが、こういう会社は要注意です。なぜなら「仕事のやりがい」以外にアピールポイントがない会社だからです。そして「仕事のやりがい」なんてものは一人ひとりによって感じ方に大きな差があります。
 

給与や福利厚生であれば提供される内容が目に見えてわかりますが、「仕事のやりがい」というのものは目に見えません。例えば私は今こうして記事を書いていますが、記事を書くことにやりがいを感じる人もいれば、「めんどくせえな」と思う人もいるものです。同じ仕事でもやりがいの感じ方は違うのです。
 

by 耿念堃
by 耿念堃

 

早期離職したくないときの会社選びの心得をひとつにまとめるならば、「重工業系の大企業で、就職四季報で調べて早期離職率が低く、会社説明会ではやりがい以外にもウリがある会社」ということになります。なんだかつまらない就職活動になりそうと思っている人もいそうですね。
 

ただ冷静に考えてみてください。当たり前な話ではないですか?重工業なんて先々に転職しようと思ったときに「つぶしがきかない」かもしれません。「つぶしがきかない」から仕方なく会社に残っている可能性だってゼロではありません。
 

早期離職したから不幸とも限らないし、逆に幸せとも限らない。人生どうなるかわかりません。ただ、早期離職をしにくい会社はどこなのかと調べるときには、個人的な感想だけではなく、データの活用も重要です。冒頭で示したキャリアコンサルタントや中小企業経営者の言葉騙されることなく、自分の意志で進める就職活動になるでしょう。
 

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この記事を書いた人

井上洋市朗

「なんか格好良さそうだし、給料もいいから」という理由でコンサルティング会社へ入社するも、リストラの手伝いをしてお金をもらうことに嫌気が差し2年足らずで退職。自分と同じように3年以内で辞める若者100人へ直接インタビューを行い、その結果を「早期離職白書」にまとめ発表。現在は株式会社カイラボ代表として組織・人事コンサルティングを行う傍ら、「生きづらい、働きづらい環境を変える方法」についての情報発信を行っている。