ココロを整頓するために身辺を整頓するーうつ病・休職からの復帰に向けてー

はじめまして、佐伯 有です。
 

「うつ病・休職からの復帰」をテーマとして、こちらでコラムを掲載いただくことになりました。今回は「整理整頓のススメ」について書いていきたいと思います。
 

早速ですが、自己紹介がわりに執筆時現在のぼくの簡単なスペックを。
 

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職業:システムエンジニア
年齢:34歳
住所:東京都23区在住
配偶者:なし(婚約者あり)
症状:心療内科にて中度から重度のうつ症状と診断。
休職、投薬治療中。(2014/4時点)
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正直なところ、ぼく自身、まだうつ、休職からの回復には至っていません。本来、情報の確度や有用性を考えれば、こういった記事は復職が完了したあとに書くべき、との意見もあるかとは思いますが、復帰への手応えを感じたことをこちらで共有することで、同じような悩みを抱えている方や経験者の方々からご意見や知見を得ることができるのでは?と考え、今回の執筆にあたっています。
 

うつ病からの復帰に向けて、整理整頓に着手したワケ

 

2014年の1月に休職が決まったとき、うつの典型として発生する以下3つの状態について医師から説明がありました。
 

①食欲がなくなる。
②眠れなくなる。
③(趣味・活動に対する)欲求がなくなる。
 

俗にいう、食欲、睡眠欲、活動意欲(性欲も?)の三大欲求ですね。ぼくの場合、①と③が顕著で、仕事中にランチを食べられなかったり、大好きなカメラを持つことも億劫になったり、といった状態でした。厄介ごとや人間関係が原因で、一時的にでも「とにかくダルい、何も考えずに休みたい」という状態に陥り、それが慢性的に続いているものだと考えていただくのがわかりやすいかもしれません。
 

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そんな状態で、カウンセラーから「しばらく自宅で何も考えずに引きこもって寝てなさい」という指示が出ました。最初の2,3日はそれまでの仕事疲れでぐったりしており、指示どおり泥のように眠る生活を過ごしました。
 

ところが、もともと活動意欲が旺盛なほうで、元気な時は土日に自宅にいるなんて考えられないタチだったため、仕事をしたあとの休養ならいざしらず「何もしないで寝てる」こと自体に大いなる罪悪感を抱いてしまい、いてもたってもいられなくなったのです。
 

とはいえ、休養時にできることなどは限られているし、人に会いに出かけるのもつらい。結局、ほどほどに労力をセーブし、自宅にいながらできることを模索した結果「自宅の整理整頓をやってみよう」ということになったわけです。
 

部屋の暮らしづらさを改善してみた記録

 

漠然と「この部屋暮らしづらいなぁ」と思っていたところがあり、少し改善したいという気持ちがありました。暮らしづらい原因を考えた末、改善しようと考えたのは、特に台所にあった以下の様な問題です。
 

①ナマモノ(特に生野菜・肉類)を使い切れず捨ててしまうことが多い。
②ゴミ箱がいっぱいになってもゴミ袋を変えず溢れてしまうことが頻繁にある。
 

結論、これら2つの原因は、「モノの居場所」を決めていなかったことでした。整理本などによくある「モノの居場所」というのは「モノを収納しておく場所」であると思われがちですが、実は「モノを使いやすくするための場所」という思考が正しいです。
 

①も②もモノの居場所を作ってあげると簡単に解決しました。生野菜をしまう場所がチルド室の中だけ、と決められていれば、チルド室をぱっと見て無ければ買い足すということができます。「決められた場所以外に置けない」という制約があると余計な買い物が減り、冷蔵庫全体の空間もスッキリ見やすくなる、という効果もありました。ゴミが溢れていたゴミ箱も、ゴミ袋の場所をテキトウに指定していたことが原因だったので、所定の場所にゴミ袋を置くことで解決しました。
 

こういった整理って、もともと身についている人からすると「なんで?」というような内容ですが、散乱したゴミや朽ちていくナマモノを見ながら情けなく思っていた人間からすると、この成果は結構大きなものでした。
 

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たかが家事労働。でも大切なのは「このくらいのことならできる」という達成感。

 

活動意欲がほぼない状態から「部屋もすこし使いやすくなったし、外に出てみよう」と考えられるようになったぼくの活動ログです。内容自体は他愛ない、よくあるお片づけ日記ではありますが、あえてここまで書き連ねたのは、「このくらいのことなら出来る」自分を取り戻すことが重要だということを主張したかったからです。
 

整理整頓に限らず、家事労働がうつ状態の改善に良いところというのは以下の三点であると考えています。
 

【1】特殊なスキルや深い思考などを必要としない。
【2】短時間で決まった作業をすることで一定の成果(達成感)が得られる。
【3】工夫次第で(工程や部屋の使い勝手などを)改善できる。
 

うつの原因分析として、ぼくの場合は「仕事がうまく行かず自分を責め続けた」ことだと考えています。近い理由で発症している人は、自分に対する無力感や自信の喪失を強く感じているのじゃないかなと。その自信の回復方法の一つがこの「部屋を使いやすくしてやったぜ」という達成感です。
 

趣味のアウトプットで人に褒められるとかもまたひとつなのですが、そもそも対人起因で発症した人には、まず「自分で自分を褒めてあげる」環境を作ることが最適で、家事ってその環境づくりには最適なんです。
 

ぼくの場合もそうでしたが、うつを発症し、休職、または離職状態に陥るような状況は、(過酷な労働条件を除いても)日常生活のどこかしらが荒れ始めているはずです。人間は動物なので「仕事に復帰する」とか「社会復帰する」という以前に、自分という動物がどうやったら心地よく生活できるだろうというのを考えてあげるのが回復の近道になるはず。
 

「生きづらい」というのは、「心がつらい」「体がつらい」「環境がつらい」の三因が複雑に絡まって発生しています。環境の一部を改善することで、心と体がラクになる可能性はあり、それを自分の手でやってみる、というのが、部屋を片付けることだと思います。まだ未着手の方は、ダメモトでお試しあれ。

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この記事を書いた人

佐伯有