【生活保護受給者へのインタビュー】生活保護ってかわいそう?〜生きづらいという考え方の転換〜

■今回のインタビュー記事の掲載について
 

Plus-handicapでは、株式会社よりよく生きるプロジェクトと連携して、過去に生きづらさを抱えていたけれど、現在では前向きに生きられていると感じている方々へのインタビュー記事を全5回掲載します。生きづらさを感じている人へのヒントとなり、また、生きづらさについての理解が深まればと考えております。
 

今回は第1弾として、生活保護受給者へのインタビューをご紹介いたします。
※インタビュー内容をそのまま掲載できるように、名前はイニシャルにしています。
 

ケース1:生活保護利用者Aさん(50代)

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インタビュアー:織田 昇(よりよく生きるプロジェクト カウンセラー)
 

織田カウンセラー(以下、O):今日はよろしくお願いします。Aさんは現在、生活保護利用者ということとお聞きしましたが、どんなことに悩んでいたり、困っていたりしているのですか?
 
 

Aさん(以下、A):生活保護を利用している人は、周りが可哀想な人、ダメな人っていうレッテルを貼るので、それにどう向き合うかが一番大変でした。自分で克服したので、私は、今、本当に幸せですよ。色んなものを抱えている人達全員に対して、かわいそうとかダメだとかレッテルを貼らないでほしいと思います。
 

私は今が一番自由です。全部自分の時間に使える。昔、バリバリ働いてキラキラしてた頃も、それはそれで大好きだったけど、自由な時間はなかった。世の中、生きづらい人って楽しくないことをやっているから生きづらくなっているんだと思うの。楽しいことをやったらいいんですよ。私は特殊な精神疾患をもっているんですけど、そう思うようにしたの。
 

O:毎日どんな生活しているんですか?

A:昔できなかったことをやっています。本を読んだり、DVDを見たり、英語の勉強をしたり。通訳になりたいわけではないけど、留学を目指してます。100円の本やyoutube、今は、お金のかからない教材が山ほどある。もう決めちゃったのね。楽しくないことはやらない。今は準備期間。
 

O:なるほど。準備期間って何のための準備なんですか?

A:世の中のために生きること。だから今は「世の中からお金をお借りしている」感覚。世の中のために生きたら、借りていたお金を返すことになると思うの。考えてみたら100年後、私のこと覚えている人いないんじゃないかなって。そう考えれば、1年2年大差ない(笑)とか、そういう発想に変わって。しなければならないことは止めようと思ったんです。
 

というのも50年くらい「やらないといけないこと“しか”やってこなかった」っていうのに気がついちゃった。だから極端な話、好きなテレビ見た事なかったし、好きな映画観たこともない、スーパーで好きなものを買ったことも無かった。家族のためにだけ生きてきたから。だから今、楽しくてしょうがないの、この生活。
 

O:じゃあ、本当に生きづらかったのは生活保護になる前?

A:そうかもしれない。だけどその時は、そこに気が付いていなかったから、その感覚は全くないの。むしろ、仕事も充実していたし、結婚もできたし、毎日忙しかったけど楽しかった。でも今は、自分のために何もしていなかったことに気が付いちゃった。せっかく生まれてきたんだから自分のために、楽しんだ方がいいんじゃない?そういう感覚。
 

世間の常識によって、多くの労働者が9時〜17時などという労働時間を決めていると思うけど、あなたが好きなこと、それだけができる仕事を選択すればいいと思うの。世の中のみんなが。
 

写真とご本人との関係はありません。
写真とご本人との関係はありません。

 

O:障害とか特殊なものをもっていると、何で私だけとか思わなかったですか?

A:私もそう思った。この疾患もっている人で、ひどい人は毎日寝たきりになっちゃうのね。私もなっちゃうのかなって不安になって眠れない時もあった。でも経験しないと、その世界を見ることはないの。世界が広がってよかったって思ってる。生活保護も受けてみないと、生活保護の人の気持ちもわからなかった。考える時間をいただけたし、将来、本とか書く時にすごいサクセスストーリーになるじゃない?あとは上に上がるしかないから。
 

こんなカンジで考え方を変える。今は、準備期間だとか、何てラッキーとか。怒られちゃうかもしれないでしょうけど、どれだけ自分がラッキーかと思えるか。障害をもっている人も自分はラッキーって思えばいいわけですよ。だって、人が経験できない世界を見ることができるって、すごいことじゃない。私も最初は辛かったけど、強みに変えたらいいと思ったの。障害をもっているってことは、別のものをもっているわけで、それはすごいことであって、それを強みにすればいいんじゃない?こんな経験はみんなができないんだから。
 

何年か先、あの時、こんなことあったよねって笑えるんだったら、今から笑っていればいいじゃん。そんな発想の転換を教えてあげたらいいと思うの。私にも葛藤はありますよ、こう言いつつも。葛藤が起こったら、それを打ち消して…とかを繰り返している。
 

O:今話してくれたことを思えるようになった転換点って何だったんですか?きっかけとか。

A:たくさんの本を読んで、ひたすら考えた。ただ考えただけ。自分と向き合って、自分の考え方、見方を変えるだけなんだって気付いた。別に宇宙から見たら私なんてゴミやほこりみたいなもんだとか。見方を変えただけで楽になることがあると思う。世の中の人がどう思おうが、私は私なんだって。今は、準備期間とか考えて楽しくなるように考えてみる。
 

「環世界」に生きてるっていう言葉が好きで。アリはアリの世界に生きてる。象は象の世界に生きてる。アリと象は見えるものも、見ているものも、見え方もすべて、違う。人間も、1人1人が別の見方、考え方の世界を生きてる。だから自分がこうだと思えばそうなるの。自分がダメだと思えばダメなことしか見えないし、自分が目標たてたら、目標達成できるんです。
 

2度目ですが、写真とご本人は関係ありません。
2度目ですが、写真とご本人は関係ありません。

 

常識や潜在意識を楽しいことに書き換えれば、夢は必ず叶うと思う。潜在意識のパワーはすごいの。だからできるイメージや楽しいイメージを貼るといいと思う。ドリームマップとかも同じだと思うけど。見方を変える、フレームを変える。宇宙から見てみるとか。
 

あと、一時期、私、掃除しない、洗濯しない、「やらなければいけない」と思っていることをやってみないようにしたの。でも別に死ななかった。掃除は毎日しないといけない。ご飯はきちんとつくらないといけない。テレビは見ちゃいけない、働かなきゃいけないとかいうのが、あたりまえの常識にあるから、「きちんとしなきゃいけない」って育って「やらなければいけない」って勝手に「自分で決めていただけ」なんだって気付いた。
 

それを試してみて、生きていく上でやらなきゃいけないことは何1つなかったって気づいたら、毎日が楽しくなった。だから、毎日、自分が楽しくなることだけをしてみるといいと思う。
 

不思議なんだけど、「やりたくないことはやらない」って決めちゃったらね、やりたくないことをやろうとすると、本当に具合が悪くなって熱が出たりしちゃう。だから、もっと楽しめば良い。あとは大変な事は楽しみに変えちゃう。辛い仕事はゲーム感覚にする。どうしたら楽しくなるんだろうとか。やり遂げた時の充実感とか。
 

O:ちなみに、仮に生活保護からいつでも抜け出せるとしたら、抜けたいですか?それともこのままで居続けたいですか?

A:それは、いずれこの環境から抜ける時期が来るはずなので。早いか遅いかは、関係ないって思っています。今は興味のあることを勉強しながら、時期が来るまでの準備をはじめています。
 

O:本日は盛りだくさんで大変貴重なお話ありがとうございました。

A:ありがとうございました。
 

インタビュー後記

 
生活保護を利用している人とお話をさせていただくと、世間に申し訳ない、周りの目が厳しいなどといったことで苦しんでいるというお悩みを聞きます。また、かわいそうな人、ダメな人など決めつけられた見方をされて、落ち込んでしまう方もいらっしゃるようです。
 

果たして、本当にそうなのでしょうか。今回インタビューに協力していただいたAさんのように、同じような境遇でも、今の自分と向き合い楽しみながら生活されている方もいます。
 

Aさんの話された環世界のお話も興味深く、100年後から見たら、宇宙から見たら、という視点の切り替えは、個人的にはチャールズ・チャップリンの残した名言と共通すると感じました。
 

「人生は近くで見ると悲劇だが、遠くから見れば喜劇である」
 

人生という映画をホラー映画にするのか、コメディ映画にするのか、それともラブロマンス映画にするのか。どの角度でどこを切り取るのかは、監督、脚本、主演、全て自分だということに気づいて、今ここからの人生を楽しむことが大切だと、私は考えています。
 

今回の記事で批判的な意見をお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。ただ現在、生活保護を利用されていて、罪悪感に苦しんでいる方、絶望感に苛まれている方の少しでも生きやすくなるヒントになればと思い記事にさせていただきました。
 

生活保護って本当にかわいそうなのだろうか。この記事を読んで何か考えに変化を感じていただけたら幸いです。
 

インタビュアー 織田昇

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